栞やLOG

いつかなくなってしまうかもしれない、置き手紙のこと

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『手紙をゆっくり書く時間って、とても贅沢な時間ですよね』

と、話してくれた人がいる。

 

たしかにわたしたちは、「誰かに手紙を書く」という行為がなくても暮らしていける。

誰かにことばを書く時間は、日々を忙しく過ごしていると、

意識しなければ 生まれてこない時間なのかもしれない。

 

そんななか、生活のなかにあって、手軽に手紙を書くスタイルが、置き手紙だ。

けれど、置き手紙すら、いつかなくなってしまうのかもしれない。

 

なくなっちゃうのはやっぱり寂しいよなぁと感じたので、

今日は記事に書こうと思う。

 

母からの置き手紙の記憶

小学生くらいの頃、学校から帰ってくると、

机の上には母から 手書きの置き手紙があった。

 

− 配達にでているので、17時頃帰ります 。

 

学校から帰ったときに、心配をかけたくないという、

母の想いで書かれた置き手紙だった。

 

− おかずは冷蔵庫のなかに入ってるよ。あっためて食べてね。

 

母が留守でもご飯の場所に困らないように、そして美味しく食べられるように、という母の愛情だった。

 

置き手紙は、同じときを過ごさずして、

自分の想いを相手に伝えるための 贈りもの

 

 

用件を伝えるための置き手紙は、

当時のわたしにとっては「知らせるための手段」としてしか、受け取れていなかったのかもしれない。

 

けれど、大人になった今だからこそ、理解できるようになったことがある。

 

当時、母が手書きで残してくれた置き手紙は、

単に「知らせるための手段」ではなく、

「愛情としてのことばの贈りもの」だったのだと。

 

置き手紙が添えられた、野菜の贈りもの

先日、ご近所の方が『栞や』を訪ねてくれて、

畑でつくった野菜をたくさんいただいた。

 

 

「ひとりやから、こんなにたくさんあっても困るんや。

やから、遠慮せんといてな。よかったら、お店で使って」

 

と、わざわざ持ってきてくださった。

 

そして翌朝には、

置き手紙とともに、庭に、野菜がさらに届いていた。

 

 

昨日、野菜たちを手渡してくれたときの、

おばあちゃんの顔が目に浮かんだ。

 

手で書かれたことばに たしかに宿る、人のぬくもり。

 

この置き手紙は、

野菜に込められたおばあちゃんの愛情を、ことばで彩るものだった

 

 

置き手紙をもらう喜びがまだ残っている時代に

 

もし、わたしたちがSNSで連絡先を交換していたら

置き手紙は使っていなかったのかもしれない。

 

そんなことをふと思った。

 

子どもの頃のわたしが、もし連絡手段をもっていたら、

母とのやりとりに置き手紙は使っていなかったのかもしれない。

 

どこにいても、誰とでも、連絡をスムーズに取り合う社会へと進むなかで、

置き手紙を残す時間は、失われつつあるのかもしれない。

 

そう思うと、なんだか寂しいなと感じた。

 

わたしが、置き手紙を好きな理由は、

誰かがわたしを想い、手でことばを書くための、

時間をつくってくれたこと

 

人のぬくもりは、きっと、

そのことばが書かれている時間を 受け手が想像することで、増す

 

書き残された文字と文字の空間。

滑らかな筆跡。

その人の個性がでるようなオリジナルの書き方。

 

均一化された字体ではない、人の手で書かれたことばには、

たしかに「その人」が存在していることを思い出させてくれる。

 

『世界の紙を巡る旅』をしているkami/のなみえゆいさんから毎月届く、旅先からの手紙。この手紙を受け取る時間は、書いてくれたゆいちゃんのことを想う時間でもある。チャイ子も興味しんしん。

 

今はまだ当たり前にある、置き手紙 という文化。

いつかなくなってしまう日はくるのだろうか。

 

それを思うと、やっぱり寂しいな、と思う。

そして、想いをのせた ことばをおくる、受け取るという

好きな時間を、なくなさい努力をしたいなぁとも思う。

 

あなたが最近もらった 置き手紙 はいつだろう。

 

置き手紙の向こうに、あなたを想う人がいることを、

いつでも思い出すことができますように。

 

『栞や』の2階には、『旅先の小さな書斎』をつくっています。

古い丸ポストの並ぶ 琴平の町から、大切な人に手紙をおくる時間を過ごしませんか。

 

 

封筒と便箋はご自由にお使いください。

切手をご用意しているので、手紙に封をして、そのまま旅先の古い赤ポストから手紙をおくることができます。

旅先で、大切な人を想う ひとり旅 の時間をお過ごしください。

 

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さなえ

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