『ものがたりを編む場所』へ / 変わらない想いと、変わってゆくカタチのこと

この記事をシェアする

『栞や』 を次のカタチにつくりかえるために、ただいまお休み中。

 

約2年前の 2017年9月に『ひとり旅』をテーマにした構想が浮かんでから、

まっすぐな最短ルートではないけれど、

だからこそ出会えた人たちとつくってきた景色や、

これから大切にしたいカタチが生まれてきた。

 

そのときに自分たちがやれる 最善 と思われることを選んで、繰り返す。

この積み重ねで、人が生きることの物語は彩られていく。

 

だらけたり、うまくいかないことは毎日のなかに当たり前にあるけれど、

手探りで日々を歩けていたみたい。

 

今日は、変わらない想いと、変わってゆくカタチのことについて 書こうと思う。

 

変わらない想い

「人の生きる物語は、きっと、小説に負けないくらいおもしろい」

 

「変わらない想い」と書いてみて 最初に思い浮かぶのは、

わたしのなかにある根本的で感覚的なものの存在だ。

 

わたしは大学を出て約4年半、金融機関で働いていたのだけど、

「なんとなく、わたしらしくない」という感覚が ぬぐいきれず、

辞めることにした。

 

 

この、「なんとなく」という感覚は、

理由がないように見えて、その人にしか察知できない本能的な感覚であり、

「変わらない想い」と結びつきやすいもの だと思っている。

 

じゃあ、わたしの根本的な感覚ってなんだろう。

 

浮かんできたのは、

「人が生きることの物語は、きっと、小説に負けないくらいおもしろい」という感覚だった。

 

 

いまいち “自分で立つ” とか “自分で選ぶ” という感覚がわからないまま、

大学を出て、金融機関で働いていた。

 

当時のわたしは、

「土日の休みを満喫したら、月曜からは また次の休みを待ちながらなんとかやり過ごす」

というスタンス。

 

「いま、目の前のこと」を見れていない状態だった。

 

けれど、そのスタンスをついに受け入れられなくなったのは、

『自分で立って、選んで、世界を見てみたい』という物語気質 が 関係しているのだろう。

 

いつだって、物語は、すぐ目の前に起きる出来事のなかに

おもしろさを見出し続けることの繰り返しで進んでいく。

 

生きることって、ほんとはもっと冒険していいはずだし、

喜んだり、涙していいはずなんだろうなって。

 

自分がどんな日々を過ごしたいかは、つくっていけるって。

 

感覚として、忘れていなかったのだと思う。

 

 

けれど、どうすれば、わたしの物語がはじめられるのかは わからなかった。

 

だから、ひとりで旅に出た。

ひとりで行動するようになった。

 

自分の反応する感覚だけを頼りに、手探りで、ゆっくり歩いていくことにした。

 

無人島 『kujira-jima』での旅の一コマ。クジラつながりの不思議な島へ。photo by Oliverさん

 

「人は皆旅人である」と、共鳴した出会い

『栞や』の変わらない想いは、

 

『人生はひとり旅である。

ひとりの旅は、何度でも、誰かのひとりの旅と交わって、物語を描く。

その物語は、きっと、小説に負けないくらいおもしろい。』

 

ということ。

 

その感覚を 人生のなかに取り戻すきっかけとして、

“ひとり旅” を活動のコンセプトに選んだ。

 

そんな中で、2017年12月に絵描きの幸山さんと出会えたことは、

「やっぱり、、! 人生は、旅する物語だよね」

と、背中を押してもらうような感覚がした

 

 

絵描きの幸山さんは、

『自分たちは皆旅人である』という感覚で描くのだという。

 

光、温もり、物語。心が震える景色。

あるいは夢。『自分たちは皆旅人である』という感覚。

何度でも立ち返るべき心の居場所をテーマに絵画を制作している。

『km-portfolio/about』より引用)

 

 

幸山さんご本人に出会う前、彼が描いたクジラの絵と出会って、

わたしは、絵を見て初めて心が動いた。

 

そして、初めて夫婦で絵を買った。

 

2017年12月、絵を買った記念に撮った家族写真

 

わたしの根本にある、

『人生はひとり旅であり、ときに誰かの旅と交わり、物語を描き続ける』という感覚。

 

それを思い出させてくれた絵との出会いが、

『お守り栞』が生まれるきっかけとなった。

 

 

だから、『お守り栞』の絵を見て反応する人たちは

きっと『自分たちは旅人である』という感覚を思い出している

 

そんな人たちと出会えることは、

『旅人たちとの再会』 だと思っている。

 

変わってきたカタチ

ひとり旅に寄り添う絵

絵描きの幸山さんと出会ったのは、

夫婦で 宿をしてみよう、と決めたばかりの頃 だった。

 

絵画展「ICHIGU_WO_TERASU」(2017.12)に行かせてもらい、初めて幸山さんと直接お会いした

 

当時、空き家のリノベーションやゲストハウスに関わらせてもらっていたわたしは、

「ひとり旅をしたくなるような宿があるといいなぁ」と、思い浮かべていた。

 

ツールはなんであれ、わたしたちが届けたい感覚は、

『人生はひとり旅であり、ときに誰かの旅と交わり、物語を描き続ける』

ということ。

 

その感覚を絵というツールで描き、この世に生み出すことのできる人との、

奇跡みたいな出会いが、幸山さんとの出会いだった。

 

この出会いがあって、『お守り栞』をつくろう、と思い浮かんだ。

 

 

それまでわたしは、絵というものに反応したことがなかった。

 

そんなわたしが

「ひとり旅に寄り添う、お守りになるような絵が生まれるかもしれない」

と思い浮かんだときには驚いたけれど、だからこそ、

 

時間をかけて丁寧につくっていきたいと思ったし、

とてもいいものが生まれる予感がしていた。

 

『お守り栞』がゆっくりとカタチになるまでに、

わたしたちがやってきたことを簡単に書こうと思う。

 

「ゼロからの宿づくり」という旗を掲げて

約2年前、2017年のわたしたちの状況はといえば、

『 ひとり旅に特化した、ゲストハウスをつくりたい 』という旗を掲げていて、

無いお金をはたいて、土地を買ったばかりの頃。

 

共感してくれる人たちの協力なくしては、

資金力のないわたしたちが なにもない土地に宿を建てることは無謀。

 

何より、土地から宿を建てるまでの道のりを一緒におもしろがってくれる人たちと出会いたかったので、プレゼンを一番最初にさせてもらった。

/ はじめての”リアルの場” 企画。ドキドキの『栞や』説明会&交流会で気づいた課題と収穫 (2018.2)

 

それよりもさらに前、まだ土地を買う前の、

2017年9月に、最初に思い浮かんだ構想があった。

 

祖父が所有していた空き家を改装して、

『ひとり旅で泊まれる民泊からはじめてみよう』というものだった。

 

まだどこにも手を加えていない頃の『栞や』。民泊ではなく、隠れ家カフェとなった。

 

けれど、身内からの心配の声が大きく、民泊を断念せざるを得なかった という経緯がある。

 

いまでは、この経緯があったからこそ、出会えた人や経験できたことがあって、感謝できるようになった。

旅の醍醐味は、寄り道だったりするものね。

/ “ひとり旅”に特化したゲストハウスへ。自分の生き方を見つめ、世界を楽しくするきっかけづくり (2018.5)

 

その土地で暮らして、つくる

 

当時、岡山に住んでいたわたしたちは、

去年の2018年10月に、いまの『栞や』がある香川県琴平町に引越しを決めた。

土地の近くに住んでみないと、実際わたしたちになにができることなのか、わからなかったからだ。

 

暮らしてみなければ わからないことが、たくさんある。

 

観光地として有名な『こんぴらさん』(金刀比羅宮)

メインの参道を一本外れたところにある『栞や』のある辺りは、

山の麓に暮らす、人々の『日常』の風景だ。

 

鳥の声がすぐ近くに聞こえ、夜は星が綺麗で、空気の澄んだ静かな場所だった。

 

 

琴平で1ヶ月ほど暮らしてみて、

賑やかな参道との雰囲気の違いを活かして、

一息つけるような隠れ家カフェをやってみよう』と、一つのアイデアが浮かんでくる。

 

そして、自分たちで改装をし、メニューを考え、

12月末に、スパイスカレーをメインにした 隠れ家カフェ をOPENすることとなった。

 

 

カフェ営業がはじまると、土地のことまで気が回らなくなったり、

インタビュー記事や 『栞やlog』 が、なかなか書けなくなったりした。

 

やりたかったけれどできなかったこと、だらけたことは、

毎日当たり前のようにある。

 

けれど、いつも、

そのときなりの自分たちにとってできる最善を考えながら、カタチにしながら、

なんとか前に進んできたように思う。

 

そのとき、わたしたちが過ごすべき必要な時間をくれた、『栞や』に関わってくれている人たちの顔が思い浮かんでくる。

 

土地の可能性を探るため、キャンプ場オーナーの三宅康太さんに道具をかしてもらって、みんなでデイキャンプしてみた

 

『お守り栞』が描いていく物語

ひとり旅で見える、外側と内側の景色

その間、絵描きの幸山さんは、毎月一枚、

ひとり旅をテーマに、外側と内側の景色を捉えるような絵を、丁寧に描き続けてくれていた。

 

そして描いてくれるその絵の一部を切り出して、栞にし、

そこにわたしがことばをつけたものが『お守り栞』になっている。

 

桜満開の頃。4月のお守り栞『巡る色』

 

2018年9月に、栞のための最初の絵が描かれて、それから毎月一枚ずつ増えていった。

 

お互い連絡をとりあい、ことばを交わしながら、

「いま、どんな風に感じているのか」を一番大事にしながらカタチにしていた。

 

お互いに状況が変化するなか、毎月絵を描く、というのは

きっと簡単なことではない。本当に頭がさがる。

 

その都度必要な微調整を繰り返し、時間をかけて、少しずつ、カタチになる絵と栞。

それらをカフェに並べていった。

 

 

大切な人たちの手元に届き、見えた景色

『お守り栞』がカタチになった先に、

『誰かに届くことで描かれていく物語』がゆっくりと始まる。

 

『お守り栞』を出店する機会をいただき、

初めて見るであろう栞の絵たちに喜んでくれる人たちを、わたしは目の当たりにした。

感覚として、届いたことが嬉しかった。

きっと、みんな旅人であることを忘れていないんだ。

 

2019年2月『タビサキ』@岡山宇野・東山ビル

 

2019年5月 滋賀県@yoga space mukta にて『お守り栞』の出店をさせてもらった

 

琴平にある実店舗に訪れた方からは、

栞と出会えたことについて、丁寧にお礼がかかれた手紙をいただいたことがある。

わたし自身が 特定のお店に手紙を書いた経験がなかったので、本当に驚いたし、嬉しかった。

 

 

友人や子どもへの贈り物としてお守り栞をプレゼントしてくださった方も。

さらには、その栞を受け取った方が、実際に『栞や』に訪れてくれたこともあった。

 

誰かへの贈り物になるようなものを、これまでにつくった経験がなかったわたし。

『お守り栞』が運んでいるのは、大切な人のひとり旅を「大丈夫だよ」と応援するための愛であり、想いなのだと思う。

 

そして、現在、『世界の紙を巡る旅』をしている kami/(紙一重)の 浪江 由唯さんは、

リトアニアの風景に溶け込んだ『お守り栞』を重ねて送ってくれた。

 

空の色も雄大な風景もぴったりと重なる お守り栞『風の道しるべ』

 

『お守り栞』を ひとり旅 のおともに連れていってくれている。

 

自分の選択で、自分だけの物語を切り開いてゆく旅人にとっての、

お守りとなってくれた瞬間だった。

 

次なるカタチへ

旅人たちの物語を、もっと見たい

わたしたちにたくさんの思いがけないギフトを運んでくれた『お守り栞』。

『栞や』と先に名前が決まってから、本当に栞をつくることになったのは、

なんの計らいなんだろう。

 

2018年9月から『お守り栞』がはじまり、

前月 2019年の5月で、ちょうど10枚になる。

 

 

これまで1階のカフェスペースに絵を飾っていたけれど、

どうにも、狭くなりはじめて、絵たちにも、栞たちにも、次の場所を用意したくなった。

 

『お守り栞』が見せてくれる旅人たちの物語を、もっと見たくなった。

 

 

『ものがたりを編む場所』として 次なるカタチへ

店舗の改装をすることに決め、現在準備を進めている。

 

1階は『お守り栞』の絵を展示するギャラリー & 栞の販売をメインにすることにした。

 

2階も一部を開放して、「ちいさな書斎」のような空間にしたいと思っている。

 

たとえば、大切なひとへ栞を添えておくるために手紙を書いたり、

旅先での気づきをノートにことばで書いたり、本を読んだりするような時間があるといいなぁと思う。

ことばをきっかけに、ひとりの旅から物語が展開していく場所にしたい。

 

ひとり旅をしている『 kami/』の浪江さんから届く、旅先からの手紙。毎月のお楽しみのひとつだ。『栞や』からも手紙がおくられ、想いが循環してほしいなぁ。

 

感じたことを整理したり、大切な人たちに想いを馳せたりと、

ひとり旅だからこその、時間の過ごし方だ。

 

友人がくれたこのノートは、ひとり旅のお土産。栞やに、ことばを書き残すものがあったらいいなぁと思って、選んでくれたもの。

 

1階や2階を使って、ワークショップなどもして、

みんなで一緒に時間を過ごすこともしていきたい。

 

旅と暮らし、自然とアート。ちがっていること、同じであること。

ことばと、ことばになる前のこと。

それらの境界線を曖昧にし、なめらかにするような時間をつくりたい。

 

『栞や』の場所のあり方の変化にあわせて、カフェのメニューも見直す予定だ。

ものを書いたり、手紙を書いたりするときのおともになるような、美味しいお菓子がつくれるようになりたいなぁ。間に合うかなぁ…

 

これまでスパイスカレーがきっかけで出会ってくれた人たちにも、またカレーを食べてもらえたら嬉しいなぁと思うので、月に数回、「カレーの日」をイベント的に開催しようと思っている。

 

月に数回、数量限定で『カレーの日』をしようと思う。通常メニューからはなくなる予定なので、イベントのときにぜひ。

 

次の『栞や』のカタチとして、まだいまも、場づくりをしているところなのだけど、

open目標は、2019年6月16日(日)にした。

 

詳細は改めて、お知らせできたらと思っている。

 

 

 – わたしたちは皆、

 人生という “ひとり旅” をしている旅人 。

 

あなただけの物語があることを、

いつでも忘れることがありませんように。

 

そしてこの場所が、旅人の物語が出逢い、彩りあう、

『ものがたりを編む場所』 になるよう 願いを込めて。

 

 

変わらない想いのために、これからもカタチは変わり続けるであろう『栞や』を

どうぞよろしくお願いします。

 

この記事をシェアする
この記事を書いたタビビト:

さなえ

栞や Founder / Producer プロフィール詳細