観光地だからこそ わたしたちは 日常 を提供する

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今年の終わりに、またひとつ『栞や』の想いがカタチになりました。

土地からほど近くにある、わたしたちが暮らしている家を改装して、

12月24日よりカレーやドリンクの提供ができるようになりました。

 

 

プレオープン・オープンでは、『栞や』の構想が始まった当初から支えてくださった方にお越しいただいたり、興味をもってくれている方との新たな出会いもありました。

お祝いの品をいただき、遠方からも気持ちを寄せていただいたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

 

改めて、感謝をお伝えします。

本当にありがとうございました。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

どんなメニューかは、こちらのページをご覧いただければと思います。

さて、今日この記事でお伝えしたいのは、カレーの美味しさについて語りたいわけではありません。(もちろん美味しいよ〜)

 

『日常と非日常が混ざることで起きる不思議な力』をおもしろいと思う理由

 

この場所で わたしたちがやってみたいこと。

それは『観光地だからこそ、日常を提供したい』ということです。

そして 自然と生まれる『気づきと行動の連鎖となるきっかけ』を作りたい。

 

『栞や』が位置するのは、日本全国はもとより海外からも多くの観光客が訪れる香川県琴平町にある 金刀比羅宮(通称『こんぴらさん』)の麓です。

 

 

歴史的にも文化的にもこの場所には、多くの見所があります。

そしてその魅力のPRについては、町の方が力を入れて取り組まれています。

 

なので、わたしたちだからこそ、この場所でできることはなにかを考えました。

 

そこで思いついたのは

自分たちが暮らす家の一部を改装して住み開きをすること』。

 

 

旅先で「吸収」のスイッチが入っているときに

『誰かが暮らす日常に混ざることは、それだけで非日常の体験になる』と思っているからです。

 

それを身をもって感じた実体験がいくつかありました。

 

場所も環境も、日々転々としながら寝泊まりし、人の暮らしに混ざるライブツアー

 

昨年、私は音楽ライブのツアーに出る機会があり、関東や関西をそれぞれ10日ほどかけて車で回っていたことがあります。

 

 

寝泊まりは、各地のライブ会場を提供してくださった方の個人宅や会場でさせてもらっていました。

 

日々、誰かが暮らす場所を転々としていたことで、

「いろんな暮らし方やライフスタイルがあっていいんだ」と、頭ではなく実体験として納得。

目から鱗でした。

 

 

普段自分が暮らす家や仕事、生活スタイルに囲まれていると、その環境が当たり前の暮らしになってしまいがちですが、一歩飛び出してみれば、それはあくまでも一つのパターンでしかないことに気がつきます。

 

ましてや、人の暮らしというのは多種多様。

その人が「何を大事にしているのか」が一番反映され、良くも悪くも、その人そのままを現し、なにも隠せない空間なんです。

 

 

本人はきっと、深く考えていないと思うけれど、

暮らす場所というのは、初めて訪れる人にとって、自然と気づきを得られる不思議な力があるなと感じます。

 

おそらくツアー中は、旅のように “吸収する感覚”が強くなっていました

ただ誰かの家に遊びに行く感覚よりも、旅先では、新鮮な感覚でモノを見るスイッチが入りますよね。

そうすることで、自然と気づきの力が強くなることもおもしろいなと思います。

 

ゲストハウスの掃除で感じた「日常と非日常が混ざるのっていいなぁ」という感覚

 

こちらは2年前になるのですが、岡山の港町にあるゲストハウスで働いていたことがあります。

そこでベッドメイキングをしながらふと感じた、忘れられない感覚がヒントになりました。

 

それは

『わたしの日常と 誰かの非日常 が混ざるのって、なんかいい』という感覚。

 

 

旅先で初めてゲストハウスに訪れる人にとって、この場所にあるものや景色はすべてが新鮮に写るはず。

旅先での、あの独特な自由さを感じている状態こそ、非日常。

きっと、普段の日常や環境から解き放たれ、気持ちがオープンになっている様子が、当時スタッフをしていたわたしからでも感じられました。

 

その一方で、ゲストハウスで働く側のわたしにとっては、この場所は 日常の一部 になります。

 

 

掃除をして場を整える。

穏やかな瀬戸内海が目の前に広がる、いつもの風景。

漁師さんたちの声。

 

その日常の繰り返しを彩るのは、他でもなく、ここを訪れ 非日常を感じているお客さんの存在なのだと気づきました。

 

わたしは特別なことをしているわけではないのに、それだけで非日常の体験になっていてお互いを刺激しあえる。

日常と非日常が混ざることには、そんな不思議な魅力があります。

 

 

そんな経験を経て、わたしは『日常と非日常が混ざることで起きる不思議な力』をおもしろいなと感じるようになりました。

 

でも実際にどうやってこの感覚を形にするのがいいのか、アイデアはまだ浮かんでいない状態。

そんななか、私は今年の夏に山小屋で働く経験をし、さらに新たなヒントを得ることになります。

 

『それぞれの場所へと旅立つ、旅の中継地点』。山小屋の役割を、こんぴらさんの麓で作りたい

 

今年の夏、富山県にある北アルプスの山小屋で3週間ほど働かせてもらいました。

高い山への登山経験はゼロなのに「山小屋での暮らしがまったく想像できないことがおもしろそうだな」と思い、山小屋にひとりで働きにいくことを決めました。

 

 

わたしが働かせてもらったのは、北アルプスの玄関口に位置する山小屋。

そこで初めて、日々、山小屋で繰り広げられているストーリーを知ることになります。

 

山小屋を訪れる登山客は、宿泊して翌日も山頂を目指すため縦走する人、日帰りで山小屋でのごはんを楽しんで下山する人、スタッフと顔なじみの常連の登山さんなど、山小屋の使い方や楽しみ方は人それぞれ。

 

思い思いの時間を過ごし、そこからまた別の場所へそれぞれが旅立つところが、人生の “ひとり旅” とも重なって感じられ、惹かれました。

 

また「山小屋があることで旅を続けられる」という、そこに存在することの使命も強く感じました。

 

特に北アルプスのような高い山では、維持管理・安全管理も一苦労。

オーナーや長期滞在スタッフは命がけといっても過言ではありません。

 

食料は月に一度まとめてヘリコプターで運ばれたり、水は貴重な資源だったり、下界では当たり前のことが、山のうえではすべてが特別です。

時には、怪我人の救助などもありました。

 

 

だからこそ、登山客が自分の足で山を登り、山小屋にくること、そのこと自体が特別なんです。

 

体を使うことで登ったときには達成感もあり、ごはんの美味しさも とびきり。

感謝が自然と生まれるところでした。

 

 

登山客が自分の足で山道を歩むことと、

山小屋が運営され、スタッフによるサポートがあること。

 

「両方が揃ってそれぞれの旅が続けられる」という山小屋時間の不思議な魅力に惹かれました。

 

 

こんぴらさんも、長い参道を登る山道です。

 

標高でいえば、高い山ではないけれど、昔から多くの方が願いを込めて登ってきた場所でもあります。

今でこそ道は整備されていますが、当時を思えば、命がけだったのかもしれません。

 

 

そんな神聖な山の麓に位置する空き家が、祖父母が所有しているというご縁で巡ってきたことに、

わたしはなにか特別なご縁を感じました。

 

「こんぴらさんの麓にある、この場所を活かしたい」

という想いに加えて、

「この場所が山小屋のような役割を担うことで、誰かの旅が展開するきっかけになるのかもしれない」

と考えるようになりました。

 

そこで『参拝に訪れたときに食べたくなるようなごはんを提供する空間を自分たちで作りたい』と考え、

この度、住み開きでごはんやさんをOPENすることにしました。

 

ちなみに、『栞や』オリジナルの三日月カレーと満月まんじゅうは、

山小屋で働いていたときにみた月の美しさと、休み時間に厨房長がつくってくれたまんじゅうの嬉しさがヒントになって考えたメニューです。

 

季節の野菜をつかった『山の三日月カレー』。ターメリックライスはお月様。
まんまるの『カレーなる満月まんじゅう』は1つ1つすべて手づくり。

 

あるものを活かして、『栞や』にできること

 

こんぴらさんの麓に、祖父母の所有する空き家があったこと。

 

 

香川の土地で育つ季節の野菜やお米も、祖父が作っているものがあること。

 

 

なるべく自分たちで場所づくりをしたいこと。

 

 

参道の賑やかさから一本外れただけで、観光地でも 暮らし を提供できること。

 

 

それらを合わせて、わたしたちは 日常 を提供しようと思っています。

 

ぜひ、旅のスイッチをONにして『栞や』を訪れてもらえたら嬉しいです。

 

誰かの旅のきっかけとなりますように。

ここでの出会いを心より楽しみにお待ちしております。

 

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この記事を書いたタビビト:

さなえ

栞や Founder / Producer プロフィール詳細