ひとり旅 を彩る「寄り道」のできる場所でありたい

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– 旅の目的地ではなく、中継地点でありたい。

これは『栞や』の根幹にある想いのひとつ。

 

目的地を目指すなかで、本来のルートから外れる「寄り道」は、効率だけを考えれば一見無駄と思えるかもしれない。

だけど、寄り道をしたからこそ出会えた思いがけない「何か」によって、旅は彩られ、味わいが増してゆく。

その連続によって、目的地の場所さえ変わることがあってもいいと思っている。

 

「旅の寄り道」としてふらりと訪れてもらえる場所であるために、『栞や』にできることは何か。

それを模索しながら、カフェ営業をスタートして、初めて迎えた年末年始の話について書こうと思う。

 

参拝のあとに訪れたくなるような、ほっと一息つける場所を提供したい

 

例年、初詣シーズンは『金刀比羅宮』(通称:『こんぴらさん』)を目指して、全国から多くの参拝客が琴平を訪れる。

メインの表参道は、いつも以上に賑わい、活気に満ちている。

 

土産物店や旅館がズラリとたち並ぶ。こちらは 2018年に参拝したときの様子。

 

メインの表参道はあまりに有名だけど、参道から一本横道に入るだけで、

静かで落ち着いた空気が流れていることについては、実はまだあまり知られていない。

 

参道のすぐ側でありながらも、落ち着いた時間が静かに流れる。

澄んだ山の空気を味わえ、『こんぴらさん』の麓の暮らしが感じられる道。

 

そんな 知る人ぞ知る、『こんぴらさん』参拝への秘密の抜け道に、
隠れ家カフェ『栞や』はある。

 

参道の100段目にある赤いポストのY字を左に曲がると、『栞や』に繋がる。

 

参拝を終えたあとに、ほっと一息つける休憩場所を、

参道の喧騒から離れたこの場所を活かして、提供したい。

 

そう思い、年末年始は通常の営業日(土・日・祝日のみ営業)を変更して、

12月29日〜1月3日まで休まずカフェをOPENすることにした。

 

すると、わたしたちにとっても、思いがけない出会いの数々が訪れることになった。

 

旅の休憩地点では、出会いが交差する

高知から参拝に来ていた、ある老夫婦と過ごした時間

 

「参道は ものすごい人だったよ。」

『栞や』を偶然見つけて立ち寄ってくれた、優しそうな老夫婦が、そう教えてくれた。

 

「毎年、高知から年に一度、ふたりで『こんぴらさん』にお参りに来ていて。

いつも大門までは人混みを避けてこの抜け道を通っているけど、去年はこのお店なかったよね?」

 

初詣シーズンの参拝客の多さを知る常連さん。

人混みを避けるためにこの抜け道を利用している人がいることを、会話を通して知った。

 

そしてお正月限定メニューのぜんざい『満月善哉(まんげつよきかな)』を食べて

「あ〜、やっと落ち着いたわ。」

と、しばらく店内でおしゃべりをしながら くつろいでくれた。

 

お正月限定メニュー『満月善哉(まんげつよきかな)』。善哉(ぜんざい・よきかな)とは仏教用語で「素晴らしい」という意味。満月に見立てたかわいい栗入り。

 

帰り際、

「また来年、お会いしましょう!お元気で!」

と、手を振って別れた。

 

例年参拝に訪れる人にとっても、『栞や』が新しい発見の場となり、旅の中継地点として休んでもらえたことを実感できた経験だった。

 

「お手洗いお貸しします。」が、寄り道のきっかけに

 

『こんぴらさん』までは長い参道と階段が続く。そして冬の山は、冷える。

そこできっと困るのが、お手洗い問題。

 

参拝客がこの時期に集中することを考えると、仮設トイレはあっても、数が足りない可能性がある。

『こんぴらさん』を目指す途中に位置する『栞や』なら、もしかしたら、このタイミングで必要とする人に使ってもらえるかもしれない。

 

そう考えて、『栞や』のお手洗いを気軽に使ってもらえるように、店の外に貼紙をした。

 

 

すると、三が日は 毎日声がかかり、数組の利用があった。

 

もちろん、トイレの利用だけでもOK。

なかにはそのあと、庭のストーブを囲んで『満月まんじゅう』を食べてくれた方もいた。

関東から来られた方は、店内の雰囲気を「鎌倉の古民家カフェみたい!」と言って、楽しんでくれた。

 

広島から来た、小さな子ども連れのご家族は、

「実は、車で道に迷って、山奥に行ってしまって、なかなか参道へ来れなかったんです。

トイレもずっと行けてなくて。ようやく参道への道も見つけたんで、ホッとしました。」

と言ってくれた。

 

また、新潟からひとり旅で来ていた60代の女性の方にも すごく喜ばれ、

「四国一周の旅を続けるんだ」と話してくれた。

 

 

わたしたちの家(お店)にあるトイレを気軽に使ってもらっただけ。

それだけで、必要とする人に喜んでもらえて、交流するきっかけが生まれた。

 

まさに、わたしが目指していた『旅の中継地点としての、山小屋のような在り方』と重なった。

 

「この場所だからできること」を模索することは、自分の経験や感性が反映され、面白い。

 

寄り道を楽しむことで旅を彩る場所でありたい

 

いつもの道を行くことの良さも、冒険してみることの良さも、

寄り道しながら 味わえるのが 旅であり、人生であるように思う。

 

自分が「いいなぁ」と思う体験や感覚に出会って、次に進む方向を選ぶ。

 

その繰り返しで手探りでつくる『栞や』は、目的地はあってないようなものかもしれない。

その道のりを肯定し、楽しむ場所でありたいと思う。

 

『こんぴらさん』の参道から一本外れたところにある『栞や』。

旅の寄り道をしに、ふらりと立ち寄ってもらえたら嬉しい。

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この記事を書いたタビビト:

さなえ

栞や Founder / Producer プロフィール詳細