歩んできた足跡は だれかの道しるべに / 『リノベーションまちづくり実践講座』の機会を終えて
− 2人の足跡をたどって
たくさんの旅人が 訪れる場所 となりますように。
これは『栞や』をopenしてすぐの頃に、友人がわたしたちに贈ってくれたことばで、
今も大切にしている ことばの道しるべ。
openして1年経ったばかりの、旅の途中のわたしたちに 今回巡ってきたのは、
『これから自分たちのお店をもちたい』
『やりたいことを形にしたい』
という方たちにむけてお話する機会だった。
今日はその日のことを書こうと思う。
「やってみたい」は「やってみよう」に変化する
機会をいただいたのは、丸亀市がおこなう『リノベーションまちづくり』事業のなかの、実践講座
プログラム。
丸亀市では、これまで空き家や空き店舗のリノベーションを通じて まちなかの再生を図る
『リノベーションまちづくり』を進めてきた経緯がある。
「やりたいができる、出番と居場所があるまち」という再生コンセプトのもと、
「やりたい」を応援し、まちなかで実現できるようサポートしているのが
『リノベーションまちづくり実践講座』だった。
その講座のなかで、
地域で「自分の好きなこと」「やりたいこと」に取り組んでいる実践者との交流の場として、
『栞や』に声をかけていただいた。
『空き家を活かして、自分たちらしく 新しくなにかをはじめること』に共感しているわたしたちにとって、
この機会に出逢えるひとたちとの時間はとても楽しみだった。
わたしの祖父母が持つ空き家がたまたまあったのが、琴平(香川県)のまちだった。
祖父母は別の場所に住んでいるため、まさかこの場所に空き家があるとは思ってもみなかった。
岡山で暮らしていたときに、身近なひとたちが 空き家を活かして心地よく暮らしていたことや、
『自分を表現することの魅力』を目の当たりにしていたわたしたち。
” あるものを活かしたい、磨きたい ” という想い はつよくなっていった。
ちょうどその頃にこの家の存在を知ることになる。2017年の終わり頃のこと。
そして、空き家に手をかけて、空間そのものや流れる時間を『変化させていくことの魅力』 を知ったのは、
近くでその姿を見せてくれるひとたちがいたから。
岡山での暮らしは、わたしたちの「やってみたい」という気持ちを育て、
「やってみよう」という実際の行動へと後押ししてくれた期間だったように思う。
店づくりの知識や経験はなかったけれど、
「やってみたい」「わくわくする」が行動の原動力となって香川県の琴平町へと引っ越してきた。
住みながら考え、自分たちができることを小さくはじめる
1年間、暮らしながらの店づくりをゼロから併走させてみての感想は、
思った以上に大変だったこと。そして思った以上に楽しかったこと。
自分がやりたいことと、いまの自分にできることを天秤にかける。
キャパオーバーしていたり、なんだか違和感があったりしたら、立ち止まる。
はやくたどり着きたい理想と、ゆっくりと育っていく現実とのギャップに、もどかしい日々も続いた。
試行錯誤するなかでの、よき出逢い。
思いがけないものが生みだせたときの、表現する喜び。
仲間を頼ること。時間をかけることの大切さ。
わたしたち夫婦がこの場所で「やってみたい」をはじめると、
出逢うタビビトたちによってこの場所は彩られ、変化していった。
暮らしながら自分たちで手を動かして空き家を活かすことは、手探りの連続。
それで次がようやく見える、点と点が繋がっていくスタンスのわたしたちだったので、
『栞と本とカレーのお店』ということばに着地するまでに1年がかかった。
『リノベーションまちづくり講座』の受講者さんから、
「最初からなにをやるか決めていたんですか?」という質問があったけれど、
わたしたちの場合は、決まっていなかった。それに経験もなかった。
住みながら考え、自分たちができることから小さくはじめていった。
この感覚を大切に、なんども立ちどまりながら場所をつくってきたことは、
わたしたちにとっての自信に繋がってゆく。
歩んできた足跡は、だれかの道しるべに
空き家を活かすことは、ひとつの手段。
わたしたちにとって空き家を活かすことは、
暮らしと表現 を融合する きっかけづくり。
自分たちが心地よく暮らすための「つくる」を生み出す機会であり、
自分たちらしい表現を繰り返していく、可能性のある場所。
自分たちの経験から伝える機会をいただき、
その想いを改めて実感することができた。
新しく何かをはじめようとするときにやってくる不安。
周りの声を聴き過ぎてしまって、本当の自分の声が聴こえなくなってしまう焦り。
せっかく「やりたい」と想った気持ちが消えてしまうことは、本当にもったいない。
近くで実践していたひとたちがいたからこそ、わたしたちも一歩踏み出せたように、
わたしたちの経験からでたことばが、誰かの次のヒントに繋がっていったらなと願う。
わたしたちのはじまりに寄せて、友人が贈ってくれたことばのように。
今日の時間は 次につながる
3月には、『リノベーションまちづくり』の受講生のみなさまと、丸亀ビルでマルシェをおこなう。
『栞や』も出店させていただけることになり、その日の再会がいまからとても楽しみ。
と同時に、みなさんの「やりたい」の熱を力に、
わたしたちの「やりたい」をそのときまでになにか形にしたいなと、また夢が膨らむ。
今日の時間は、その日へと続いていく。