若き女性僧侶と過ごす『与え合う』時間 /『仲秋の坊主喫茶』

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世の中には、たくさんの 役割 がある。

 

情報社会になったことで、

自分で選べる仕事や暮らしの選択肢は増えてきた。

 

けれど、たとえ選択肢は増えたとしても、

自分の役割を見つけることはそう簡単なことではない。

 

” 人生はひとり旅 ” と捉える『栞や』。

時にたくさんの選択肢が迷わせたとしても、

いつでも自分の心の声を聴くことが、自分だけの物語を歩み、役割を全うするためのヒントだと信じている。

 

『栞や』で開催するイベントでは、

心の声により深く触れられる機会になるよう、タビビトと一緒に時間をつくる。

 

今日は、自ら とある役割を選んだタビビトと一緒に開催したイベント、

『仲秋の坊主喫茶』について書きたいと思う。

 

仏教の教えを、お寺をでて暮らしのなかへ持ち込みたい

 

− “お坊さん” が楽しい。今の時代だからこそ、就く価値のある仕事だと思う。

 

こう笑顔で話してくれたのは、24歳の女性僧侶、片岡妙晶 師だ。

 

柔らかな声と、まっすぐなまなざしの、若きお坊さん(まんのう町 慈泉寺)

 

彼女と出会ったのは、『栞や』にふらりと友人と一緒に遊びに来てくれたことがきっかけだった。

 

そのときの会話で強く印象に残っているのは、

 

『わたしは後継ではなかったからお坊さんにならなくてもよかったんだけど、

でも、自分で選んでお坊さんになりました。』

 

ということば。

 

僧侶の世界では、代々世襲制でお寺を継ぐことが多く、

なかには、実は、自ら選ばずして僧侶になる人も多いのだそう。

 

彼女にとって 仏教は、『目に見えない “誰か” を捉える教え』。

情報社会になり、便利な時代になったとしても 、

“自分は誰かと共に生きる存在であること” を忘れず、そう在ろうとする仏教の道を選んだ。

 

『郡家興正寺別院』 での夏法座にて

 

” お坊さん ” といっても、役割がいろいろあるのだと教えてもらった。

法事のときにお経をあげにきてくれるお坊さんもいれば、

お寺にずっといるお坊さんもいる。

 

妙晶師の選んだ役割は、仏教の教えを世に広める、説法をするお坊さんだ

 

『お寺で学ぶ仏教の教え(仏法)を、

もっと一般的な社会、つまり、人の暮らしの場所へ持ち込みたい。』

 

この想いで、僧侶のなかでも説法をする役割を選んだ。

 

『与えること』の教えと実践を組み立てる

 

そんな彼女が『栞や』で企画してくれたイベントのテーマに選んだのは、『与えること』

仏教用語では『無財の七施(むざいのしちせ)』(ダーナ・檀那・布施)という。

 

「与え合うことの循環をみてみたいね」と想いが一致し、

この時間をつくることにした。

 

 

喫茶という場で、ごはんや飲み物を囲みながら、

ざっくばらんにお話をする、その名も『坊主喫茶』

 

身ひとつでだれでも簡単にできる『7つの与えること』についての説法も交えつつ、

仏教の教えの学びと実施を組み立てたイベントにした。

 

元々仏法にある『無財の七施』に加え、

参加者それぞれが『誰かにして欲しいこと』を持ち寄ってもらった。

 

それらを皆で話し合い、与え合うスタイルで会を進めていく

 

今回集まった『与えてほしいこと』は、

・拍手して欲しい

・褒めてほしい

・悩みを聞いてほしい

・ほぉと納得できるありがたい教えがききたい

・好きな歌をおしえてほしい

・肩をかしてほしい

 

など。

 

『なぜそれを与えてほしいのか』に焦点をあてて話すことで、

他者の考えや視点を知り、他者への理解を深める。

 

自身が与えてほしいものが満たされる。

そして、 誰かの「してほしいこと」の奥にある、考えや視点を知ることができる。

 

互いに与え合うことで、肩の力は自然と抜けて、笑顔の循環が生まれた。

 

県内、県外からたくさんのタビビトさんと一緒に時間を過ごしました

 

見えづらくなった他者を捉えるための仏教の視点

 

『わたしたちは他者とともに生きている存在である』ということが見えづらくなってしまう、便利な時代。

 

その見えづらくなった他者の存在や関係性を捉える視点が、

昔から繋がれてきた仏教の教えなのだろう。

 

一度は、美大へ進学したものの、僧侶になることを自ら決め、

進路を選び直したその熱意。

きっと、彼女の視点だからこそ伝わる、現代を生きるための仏教の教えがある

 

彼女の担う役割によって、

わたしたちは自分のこと、そして他者のことを、またひとつ知ることができた。

 

片岡妙晶 師の “ひとり旅” の在り方である、僧侶という生き方。

 

彼女の役割によって照らしてもらったわたしたちもまた、

自分の道をゆっくりと歩もうと思う。

 

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この記事を書いたタビビト:

さなえ

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