自分のペースを取り戻す ひとり旅
先日、何度もこんぴらさんに参拝に来ているというタビビトが
『栞や』を訪ねてくれた。
聞けば、地元、香川県民だという。
日本各地から多くの参拝客が訪れるこんぴらさんではあるが、近場だからといって頻繁に訪れる場所とは限らない。
なぜ、何度もこんぴらさんに足を運ぶのか。
今日は、彼女がわたしたちに語ってくれた物語を、少しご紹介したい。
自分のペースで歩くことで気づけた、こんぴらさんの気持ち良さ
香川県・琴平山(象頭山)の中腹に位置する『金刀比羅宮』(こんぴらさん)は、日本で最も石段が多い神社のひとつ。
本宮までは、石段が785段。
その先にある奥社までなら、さらに583段(合計1368段)の石段が続く。
「ひとりで こんぴらさんに参拝に行くと、
自分のペースを取り戻せるんです」
と彼女は話してくれた。
はじめてこんぴらさんに参拝に来たときは、友人と複数人で登ったそう。
そのとき感じたことは、
「自分のペースで歩けないと、疲れる」ということだった。
歩くペースが早くても、疲れる。
周りのペースに合わせて歩くのも、疲れる。
そう感じた彼女は、それ以来、ひとりで登りにくることにしたのだという。
「ひとりで歩くと、登っていて、気持ちいいなって気づいたんです。
誰かに抜かれても気にならなくなりました。
昨年は、もう何度も、こんぴらさんを訪れました。自分のペースが取り戻せるんです。
暮らしのなかで、自分をリセットしたいときに、ひとりで来るようにしています。」
と話してくれた。
日常のなかで 自分のペースを取り戻したいときに、足を運ぶ場所がある。
そうして何度もひとりで足を運ぶことで、自分だけの人生の物語とその場所とが結びついていく。
彼女にとって、こんぴらさんは、観光地やパワースポットとしての価値以上に、
自分のペースを取り戻すために訪れる大切な場所になっていたのだ。
自分で決めて行動する、ひとり旅の楽しさ
身近な場所へのひとり旅を重ねるうちに、
彼女は、県外にもひとり旅をするようになったのだという。
はじめて訪れた場所でも、ノープランで行き、現地での行動は自分で決める。
「目的地はひとつくらい決めておいて、あとはノープランです。
それでもなんとかなるから、それが楽しいんです。」
笑顔で京都でのひとり旅の話をしてくれた彼女からは、
自分で決めて行動する楽しさが伝わってくる。
距離に関係なく、ひとり旅では、決断と行動を繰り返す。
それが自信にも繋がっていくのだ。
自分のペースを取り戻し、自分で道を選んで進むことで、物語はつくられていく。
腰を落ち着けて自分のペースを取り戻せるような空間を目指して
何度もこんぴらさんを訪れていた彼女は、その都度、自分と向き合ってきた。
浮かび上がった気づきもたくさんあっただろう。
「参拝帰りにごはんをゆっくり食べられる場所を探していた」と話してくれたけれど、
きっとそれは、お腹を満たすこと以上に、
自分の気づきを整理する時間をとりたかったのだろうなとも思う。
「これまでは参拝帰りに屋台でちょこちょこつまみながら食べていました。
ごはんをゆっくり食べられる場所が意外となかったので、(『栞や』が)できたことを知ってすごく嬉しかったです。」
こんぴらさんが大切な場所になっている彼女からもらったこのことばは、
わたしたちの励みとなった。
『参道の喧騒から離れ、タビビトがひとりで気持ちを整理する時間を提供する』
わたしたちが この場所でやりたいことのひとつでもあったからだ。
日常をおくるなかで、自分のペースを取り戻したくなったら、
身近なところから ひとり旅 をはじめてみよう。
ひとりで行動して、自分のペースで歩き、興味のむくままに行動する楽しさ。
その旅に、距離は関係ないのだと思う。
その繰り返しで、いつの間にか、人生というひとり旅は 彩られていくのだ。