旅先でgiveする体験が旅をもっと面白くする
江戸時代から「一生に一度は、こんぴらさん」といわれ、親しまれている金刀比羅宮。
こんぴらさんのある香川県琴平町には、日本全国はもとより海外からも多くの観光客が訪れる。
そんな歴史あるこんぴらさんの麓にある栞やだからこそ、
どうすればより魅力的で面白い旅のお手伝いができるか。
栞やはどうありたいか、話し合いました。
銀三郎
さなえ
有名観光地だからこそ作られやすい「客」という枠
さなえ:琴平は歴史もあるし、観光地として有名なところだよね。こんぴらさんもあるし、温泉もあるし、お土産やさんもいっぱいある。
観光地って、どうしても消費行動が多くなりがちな気がしてるんだけど。
銀三郎:それは自然なことだと思うし、対価を払ってモノをもらう仕組み自体は、健全なシステムじゃん。
でも、旅に出たときにそれだけだと、自分は面白くないと思ってて。
さなえ:というと?
銀三郎:もちろん、旅に出たらそこでしかないお土産も買うし、名物も食べる。自分もうどんめっちゃ食べるし。
でも、お金を払って消費した瞬間に、関係がおわったみたいでもったいないなと思って。
消費もいいけど、それだけじゃない旅の楽しみ方を提供できないかなぁ。
物質的なものじゃなくてもいいんだけど、旅先で何かが生まれるみたいな体験。
さなえ:「こんぴらさんに一度行ったことあるけど、なにもなかった」って岡山の友だちが言ってた。
そのことばがきっかけで、観光地なのに、なんにもないってどういうことなんだろう?って考えたよ。
消費することだけでは満たされなかった、旅での潜在的な欲求があるのかも。
それを満たせる体験がなかったってことでしょ?だから、ある意味で、的を得てるとおもう。
銀三郎:有名な観光地は特に「客」としての一線をなかなか越えにくいのかなとも思う。
歴史的な名所それ自体にすでに魅力があって、何もしなくても多くの人が来てくれる環境だから、その場で消費するものが置かれやすくなるよね。
商品をブランディングしたり、名産の美味しいものをPRするっていうのも、観光地を魅力的にするためのアイデアのひとつ。
でもお客さんたちが「何度も来たい」って思うかというと、必ずしもそうじゃないと思う。
そう思ってもらうための魅力を、自分たちでつくっていきたいな。
客としての枠を越えて、その人にとって旅先との関係ができるきっかけが必要かなって思う。
さなえ:町全体のブランディングや名産のPRは、すでに町の人が力を入れてくれているから、栞やは栞やなりの盛り上げ方ができたら相乗効果があるよね。
“ただのお客さん” の枠を超える、giveの体験
さなえ:有名な観光地でも「客」としての関係が越えられたらもっと面白くなりそう。
「客として見られない」ってどういうことなんだろうね?
銀三郎:ひとつは「対等であること」じゃないかなあ。
「客だからもてなされて終わり。」じゃなくて、来てくれた人にもその土地にgiveするきっかけがあったらいいよね。
別に、僕らに対してじゃなくていいから。
旅先で何かをあげたり、手伝ったりする機会ってないじゃん。
簡単なことをgiveするだけで、関係性は変わってくると思う。
さなえ:たしかに。“ただのお客さん” じゃなくなるってすごくいい。
友だちの家にいっても終始もてなされるのって、わたしは居心地悪くなっちゃうんだよね。
でも、大したことじゃないんだけど頼まれたことして、ちょっとでも役に立てたときは嬉しい。わたしのなかで勝手に入っちゃってるお客さんモードが和らぐし、充実感もある気がする。
その感じと似てる?
銀三郎:そうかも。
さなえ:だからかなー、消費だけでおわってしまう旅は、ちょっと疲れちゃうんだよな。
もてなす側としても、もてなされる側としても。
giveする感覚がお互いにあったらいいのかもしれない。
お客さんとしての意識の枠を超えるためのきっかけづくりがあったらいいなー。具体的にどうしたらいいだろう?
銀三郎:栞やの「場づくり」に一緒に関わってもらいたいよね。
この前、栞やハウスのリノベーションをみんなでやったとき、
「自分のスキルを活かした経験ができて良かった」って言ってもらえたのが、すごく嬉しかった。
その経験を、栞やに来てくれた人との間でもつくれたらなと思う。
さなえ:うんうん。
スキルっていうとハードル上がるから、その土地でたまたま自分ができることをやったっていう感覚に近いよね。
銀三郎:消費するお金は、あくまで関係をつくるためのきっかけって感じ。
自分のできる簡単なことでいいんだけど、そこでgiveすると、その人の中で土地や場所に新たな付加価値が生まれると思う。
さなえ:例えばだけど、「お手伝いしてほしいことリスト」を用意しておくとか。栞やハウスのリノベを手伝ってもらうとか、草抜きとかお皿を洗うとか、ほんと簡単なことがきっかけになりうるよね。
銀三郎:僕らも、馴染みのなかった土地で、ビルの改修を手伝ったことがきっかけで、その土地や場所が自分の一部になる体験したよね。
なんのスキルもなくて改修が初めての自分たちにも、やれることがあって嬉しかった。そしたらその場所が馴染んできて、自然とまた行きたいなって思ってた。
さなえ:やっぱり、関係人口として関わるってキーワードのひとつだわ。
「場づくり」を経験し、消費だけでおわらない旅に
銀三郎:栞やの土地は、段階的に小屋を増やしていくからこそ、やれることがあるなって思う。
小屋のまわりの庭をみんなでつくるのも面白いし、小屋の一部を一緒に作れたら面白いよね。
さなえ:この前、メンバーのひとりが横浜で栞やのことをプレゼンしてくれたときも、思ってたより反応があったって言ってくれたもんね。
「土地が魅力的」「段階的に小屋を増やしていく」「みんなでつくっていく」
このあたりが、思っていたよりもウケたのって、すごく嬉しい。
世界中で開かれ、建造物やプロジェクト等をプレゼンする『ペチャクチャナイト』。昨日 横浜であり、現地の栞やメンバーが参加してくれた。
栞やの土地や段階的に増える小屋、みんなで作っていく体制に興味を持ってくれた人が多かったみたい。特に美大生や哲学者が反応してくれたらしいのが嬉しい。笑 pic.twitter.com/aZr9a20xQD
— 銀三郎 (@ginzablow) 2018年5月25日
銀三郎:土地からはじめたことの強みかも。だって、ゼロからだからね。
どう活かすか意見もらったり、専門的な知識のアドバイスもらったりしながら、細かく軌道修正やってくしかない。畑も作りたいなー。
さなえ:地方の観光地の現状を分析した記事でもこう書いてたんだけど、すごく納得した。
有名観光地においては、どこでも独特な商慣習があります。「歴史的資産を見に一生に一度は訪れたい」というレベルの観光地なら、黙っていても大量の観光客が毎年続々と訪れます。(略)
観光施設などの観光サービス業の力によって人を集めているのではなく、あくまでそれらの地域が歴史的に形成してきたブランドの「付帯ビジネス」になっているのです。
そのため、ホテルや旅館などの宿泊施設や関連サービスは、いまだに「一見さん相手のビジネスモデル」を繰り返しているところが少なくありません。
わたしは香川が地元だからこそ、地元側の実状もある程度わかるし、
でも、地元を離れたからこそ、客観的に観光地としての現状を冷静に見られているんだと思う。
この記事でも、地方にとっては観光分野はまだまだ攻めて行ける「可能性に満ちた分野」であるとされてるけど、「残念ながら『可能性は可能性のまま終わり、そう簡単に成長はしないだろう』と感じる」と書かれてる。
だからこそ、やっぱりなんとかしたいって思うんだよね。
銀三郎:有名観光地だからこそ、「消費だけでおわらない旅」ができたら面白いよね。
「スキルを提供して、モノづくりをする」みたいな堅苦しくて強制的なものではなくて、たまたまそこでやれることをやって自然となにかが生まれてるみたいな。
さなえ:それぞれが活かされてできる、自然発生的なものの魅力があるよね。
「消費だけでおわらない旅」、すごくいい。その感覚で旅ができたら面白くなりそう。