LETTER WEEK に寄せて / オリジナルレターセット『HUG LETTER』をつくって感じた”ものづくり”のこと
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大切なあのひとへ。
手放したあと、わたしのなかで育つもの。
届いたあと、あのひとのなかで うまれていくもの。
記憶をのせた手紙は
どこまでもやさしく旅をする。
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このことばとともに、2020年4月18日〜4月29日にかけて、
オンラインイベント『 LETTER WEEK 』を開催した。
一緒にこのイベントをつくってくれたのは、kami/(かみひとえ)のなみえゆいさん。
この12日間に感じたことを、今日は書き残しておこうとおもう。
オンラインで『 LETTER WEEK 』がカタチになるまで
2019年春から2020年の冬までの約一年間、
わたしは『毎月手紙が届く』という時間を過ごしていた。
手紙の送り主は、
300日間の『世界の紙を巡る旅』をしていた kami/のなみえゆいさん。
世界12カ国の旅先でその土地で見つけた紙に記し、手紙を届けてくれていた。

ゆいさんには、彼女が旅に出る前にインタビューをさせてもらっていた。
そのインタビューで、わたし自身がとても力をもらったことと、
『彼女の「好き」からうみだされるものを、一緒に届けたい』
という想いが、ずっと心のなかにあった。
▽インタビュー記事はこちら (2018.11.24)
「好き」を巡る、制限のないひとり旅:『kami / 』浪江 由唯
旅の期間中、ゆいさんから毎月わたし宛に、手紙が届く。
そんなちょっと特別な時間のなかで『わたしが手紙で受けとったもの』は次第に増えていく。

“手紙” というカタチそのものも12ヶ国分 残っていったし、
会えないけれどことばを交わした日々の記憶や、
知らなかった彼女の一面にふれたことを、手紙のなかで重ねてきた。
まだ彼女がひとりで世界を旅していた冬の頃。
「帰国したら、旅先から『栞や』に送ってくれていた手紙に触れてもらうような展示会がしたいね」
と、自然とそんなやりとりを交わしていた。
それが今回予定してた 4月18日〜29日までの12日間。

けれど、いまもまだその渦中ではあるけれど、コロナの影響をうけ、
『栞や』は3月末で店舗営業をしばらくおやすみすることにしたため、実店舗での開催はいまは叶わなくなってしまう。
そこで急遽、展示会で届けたかったことをオンラインでカタチにしよう、とわたしたちは新しい届け方を探しはじめた。
kami/ × 栞や オリジナルレターセット『 HUG LETTER 』をつくる
紙の良さやわずかなちがいに、直接ふれてもらうこと。
旅と日常が交差する風景を 感じてもらうこと。
手紙が日々の暮らしを彩るものであったこと。
それらを実店舗の展示会では届けてみたかった。
じゃあオンラインでは、どんなカタチで届けられるだろう。
わたしたちがオンラインミーティングを重ねて見つけた方法は、4つ。
①オリジナルレターセットをつくり販売すること
②手紙についてお互いのアカウントで毎朝8時に投稿をすること
③ ハッシュタグ #letterweek で 手紙のことを教えてもらうこと
④オンラインショップ開設すること
新しくつくりなおした オンラインイベントの開催までは、残り18日間。
レターセットのコンセプトを話し合い、
ゆいさんの頭のなかにあるイメージと繋げてもらう。
サンプルを1週間でつくってもらい、最終調整。
そこからwebサイトをつくり、届けられるカタチにするまで
あっという間に日々が過ぎていった気がする。

サンプルが届いて、やわらかで繊細なその紙にふれる。
その瞬間、心の奥のやわらかいところにふれた このドキドキを、
わたしは忘れてはいけないなとおもった。
このサンプルにふれて、
名前は『 時を旅する HUG LETTER 』と浮かぶ。
” 今だからこそ、手紙 で HUG を。
大切なひとを思い浮かべるとき、あなたの記憶はきっと、
どこまでもやさしく旅をする。
やわらかな紙がはこぶことばが、未来を育んでゆけますように。 “
そんな願いを、このレターセットに込めた。

展示会で届けたかった時間を、モノとしてカタチにしたことは
初めてだったとおもう。
このレターセットを買ってくださった方の元へ届けていく過程は、
まるで展示会に来てくださったひとたちと共鳴しあうかのような、そんな感覚があった。
▷ 『時を旅する HUG LETTER 』の詳細はこちら(期間限定/完売いたしました)
「好き」が巡るなかで育んでゆくもの
LETTER WEEK 期間中のコラムでも書いたけれど、
旅先から送られてくる手紙にふれることで、
わたしは自分自身の「好き」についても知ってきた。

今回のレターセットは、kami/のなみえゆいさんと、わたしたち栞やが
心ときめいた『好き』の現れでもある。
ラトビアから手紙が届いたとき、同封されていた
種が漉き込まれた『芽が出るカード』に、わたしはすっかり感激してしまう。
ラトビア語で “愛は育つ “と書かれたカード。

想いを書き残すことのできる紙に、種を漉き込み、そこから芽がでるなんて。
その感性がほんとうに美しいなとおもった。
わたしは「ことばはお水」のようだとおもっている。
枯れていた心は、大切なひとからのあたたかいことばで蘇ることがあるからだ。
そして、ことばを贈りあうことで、大切なひととの関係を育むことができるから。
実際に『芽がでるカード』を埋めてみた。





芽吹くときを “待つ楽しみ” を教えてくれるこの一枚のカード。
毎日朝おきるのが楽しみになって、庭にでて太陽の光を一緒に浴びることは、わたしのちいさな楽しみでもあった。
そんなカードを同封したレターセットは会えないいまだからこそ、
手紙で想いを届けあうときの 豊かな気持ちや、
日々のなかにちいさな楽しみをはこんでくれるはず。
ゆいさんが「好き」を巡る旅でみつけたこのカードは、
わたしたちの今に寄り添い、未来を育むためのヒントをくれる
忘れられない一枚になった。

LETTER WEEK を終えて
オリジナルレターセット『時を旅する HUG LETTER 』は、
用意していたぶん すべてをお届けすることができた。

レターセットの素材は、kami/ の なみえゆいさんが 世界や国内を旅してみつけたこだわりの古い紙や、手漉き紙。
封筒も、その紙から彼女が仕立ててくれたもの。
シーリングスタンプには、庭先のビオラや かすみ草をあしらい、
心ときめく要素が散りばめられていて、
それらを最後に、やわらかで繊細な和紙で包む。

どれも量産できるものではなく、そのぶん ひとつひとつに 心を込めて。
やわらかなこのレターセットを丁寧に包み、手紙を添えてお届けしていた日々は、
わたしにとってすごく幸せな日々だった。
心が共鳴するひとたちと一緒に、
過ごしたい時間や、分かち合いたいモノをつくること。
そして、その生み出したものを、
おなじく心が共鳴するひとのもとへ届けていくこと。
この行為に、わたし自身がよろこびをもらっていた。
日常生活を送るなかで、物質的に満たされた現代。
なにかをあたらしくつくる意味 を見出せなかった期間が、わたしは随分と長かった。
けれど、自分で心惹かれるものを選びとるようになったり、根源的な「好き」にふれる体験が積み重なっていくなかで、
自然と「つくりたい」や「届けたい」がわたしのなかでうまれてくるようになった気がしている。
その行為自体によろこびを感じて、つくる過程をたのしみ、
さらにそこから共鳴する誰かのもとへ届けて出逢っていくことは、
きっと幸せな未来を育む。そう信じられるようになった。
心地よくちょうどいいぶんだけ、丁寧に。
自分と大切なひとたちを よろこびで満たすものをつくること。
この先も、その在り方を大切にして、過ごしたい時間や分かち合いたいモノをつくり、
これから出逢っていくひとたちのもとへ届け、繋がっていきたい。
▽ HUG LETTER を受けとってくださった方の感想記事
手紙越しのハグを。大切な人に贈りたくなるHUG LETTERを買いました。
ゆいさんの旅がなければ、うまれなかったこの時間。
一緒に『LETTER WEEK』を開催し、オリジナルレターセット『HUG LETTER 』をつくってくれた kami/のゆいさん、本当にありがとう。
また一緒によろこびからつくれることが、心から楽しみ。

最後に – LETTER WEEK コラム –
LETTER WEEK 期間中、毎日投稿した記事をこちらにまとめた。
コラムのタイトルは『わたし宛に、手紙が届いた』。
“手紙をとおしてわたしが受けとったもの” をテーマに、
12通分書いたので、よかったら日々を旅する気持ちで読んでいただけたら嬉しい。

“わたし宛て ” に届くということ vol.1(タイ)
記憶を呼び起こす vol.2(バンクーバー)
放ったことばの着地点 vol.3(メキシコ)
あふれる好奇心 vol.4(リトアニア)
表現としての手紙 vol.5(ラトビア)
筆跡のむこうに息づくもの vol.6 (エストニア)
遠い、知らない文化への入り口 vol.7(イギリス)
ことばに “ふれる” vol.8(インド)
過去、現在、未来 vol.9(ネパール)
みんなちがう場所で生きる vol.10(ベトナム)
ときめきと出逢う vol.11(ラオス)
交わしたことば、記憶の蓄積 vol.12(韓国)

一緒にLETTER WEEK を過ごし楽しんでくださったみなさん、
本当にありがとうございました!